ガラント様式を紡ぐ調べ──ヘブラー&レーデルによるJ.C.バッハ〈6つのフルート・ソナタ Op.16〉

本コラムでは、イングリット・ヘブラー(フォルテピアノ)とクルト・レーデル(バロックフルート)が1970年7月にSt. Kolomanで録音し、Philips UK 6500 121の赤銀ラベルでリリースされたJ.C. バッハ《6つのフルート・ソナタ Op.16》の魅力を、演奏背景から録音技術、評価とコレクション市場に至るまで包括的に解説します。
フォルテピアノの軽やかで鮮明なタッチと木製バロックフルートの温かみある音色が織りなすガラント様式の優雅さ、当時としては先駆的だったHIP(歴史的演奏慣習)アプローチ、さらにはオリジナルLPと再発盤の入手状況や価格動向をまとめました。

アーティストについて

イングリット・ヘブラー

ウィーン生まれのクラシック・ピアニスト(1929年–2023年)。サルツブルクのモーツァルテウムで学び、フォルテピアノによる古典派演奏で国際的な評価を獲得。J.C. バッハの鍵盤作品全集やモーツァルト、シューベルト録音が特に知られており、1960–70年代にかけてPhilipsレーベルで多数の録音を残しています。

クルト・レーデル

ドイツ(当時ブレスラウ)生まれのフルート奏者・指揮者(1918年–2013年)。バロックフルートの復興運動を牽引し、Ensemble Pro Arteなどを通じてHIP演奏を普及。木製フルートならではの温かく柔らかな音色と緻密なアーティキュレーションで知られ、多彩な古典派・バロック録音に参加しました。

作品背景

Johann Christian Bach(1735–1782)は「ロンドンのバッハ」として知られる古典派作曲家。Op.16は1760年代後半から1780年前後にかけて出版された全6曲のフルートまたはヴァイオリンと鍵盤楽器のためのソナタ集で、二楽章構成の中にガラント様式特有の優雅でかつ可聴性の高い旋律が散りばめられています。

録音の詳細

  • 録音時期・場所:1970年7月、St. Kolomanにてステレオ録音
  • レーベル・品番:Philips UK 6500 121(赤銀ラベル)
  • カバーデザイン:ホワイト地にシンプルなタイポグラフィを配したミニマル・デザイン
  • 再発情報:ディスコグラフィ・ボックス『The Philips Legacy』(CD 4にOp.16収録)などデジタル/CD再発が複数のフォーマットで展開。

音楽的特色

各ソナタはアレグロ系の第1楽章と、優雅なアンダンテ系の第2楽章という対比を基本とし、第1番ニ長調は活発さと歌謡性を併せ持つ典型例です。ヘブラーのフォルテピアノは軽快なレガートとクリアなタッチを両立し、レーデルのバロックフルートは柔らかな音色で旋律を丁寧に歌い上げ、両者の対話的なアンサンブルが高い完成度を示しています。

音質とエンジニアリング

1970年当時のPhilips伝統的アナログ・ステレオ録音は、リールテープと高品位マイクを活用した暖かみあるサウンドと明瞭な定位感が特徴。近年のデジタル・リマスター盤ではオリジナルの音場を忠実に保ちつつノイズリダクションを施し、現代のリスナーにも最適化されています。

評価と影響

古楽復興期の先駆的録音として、音楽評論家から高い評価を獲得。MusicWeb Internationalは「均整の取れた構成と魅力的な旋律が融合した名演」と評し、以降のHIP演奏潮流に大きな影響を与えた一枚とされています。

収集価値と入手情報

オリジナルLPは中古市場でで入手可能。CD再発盤やApple Musicでのストリーミング配信も充実しており、Apple Musicでは全12トラック約48分の演奏が聴取できます。YouTube公式プレイリストでも全曲視聴が可能です。

結び

フォルテピアノとバロックフルートという斬新な組み合わせでJ.C. バッハのガラント様式を鮮やかに再現した本録音は、古楽ファンのみならずクラシック愛好家必携の名盤です。


参考文献

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Ingrid_Haebler
  2. https://en.wikipedia.org/wiki/Kurt_Redel

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