繊細で儚い音色の詩人:ニック・ドレイクの生涯と音楽世界

ニック・ドレイクは1948年6月19日に当時のビルマ・ラングーンで生まれ、1974年11月25日にイングランドのタンワース=イン=アーデンで26歳で亡くなったイギリスのシンガーソングライターです。Island Recordsから発表した3枚のスタジオアルバムは生前に大きな商業的成功を得ることはありませんでしたが、1979年の回顧盤『Fruit Tree』リリース後に再評価され、1999年のフォルクスワーゲンCM起用を契機に『Pink Moon』が大幅にセールスを伸ばし、没後にカルト的な人気を獲得しました。現在ではノラ・ジョーンズ、ホセ・ゴンザレス、アイアン・アンド・ワイン、フィービー・ブリジャーズら多くの現代アーティストに影響を与えた偉大なミュージシャンとして知られています。

生い立ちと背景

ドレイクは父ロドニー・シャトルワース・ドレイクと母モリー・ドレイクの次男として生まれ、伯母のアンナ・シャトルワースを祖母に持つ名門家庭で育ちました。1951年に一家は英国ウォリックシャーのファー・レイズ(Far Leys)邸に移り、父はWolseley Engineeringの会長を務め、母は作曲家として活動していました。1957年にイーグル・ハウス・スクール、1962年にマールボロ・カレッジへ進学し、ここでピアノ、ギター、クラリネット、サクソフォンを学びました。1967年10月にケンブリッジ大学フィッツウィリアム・カレッジに入学し、英文学を学ぶ傍ら地元のクラブやコーヒーハウスで演奏活動を開始。フランス・エクサン=プロヴァンスでのバスキング経験も彼の演奏スタイルを磨く機会となりました。

音楽キャリアと録音

1968年1月、プロデューサーのジョー・ボイドと出会い、Island Recordsとの契約を獲得。1969年7月に発表したデビュー作『Five Leaves Left』はフェアポート・コンヴェンションのリチャード・トンプソンやペンタングルのダニー・トンプソンらが参加し、ロバート・カービーがストリングス・アレンジを担当しました。1971年3月には2作目『Bryter Layter』をリリースし、同じくジョー・ボイドとRobert Kirbyの協力を得て洗練された編曲を加えました。1972年2月には3作目『Pink Moon』をわずか二晩のスタジオセッションで録音し、ギターとピアノのみの極めてミニマルなサウンドを追求しました。

作風と技術

ドレイクの音楽はフォーク、チェンバー・フォーク、フォーク・ポップ、フォーク・ロックが融合したもので、詩的かつ内省的な歌詞が特徴です。ウィリアム・ブレイクやW・B・イェイツらの詩的イメージを彷彿とさせるリリカルな表現を用い、オープン・チューニングや複雑なフィンガー・ピッキングを駆使したギター演奏が高く評価されました。静かなバリトン・ボーカルと相まって幻想的な音響空間を生み出し、生前の評価は限定的だったものの、その独自性は時代を超えて支持されています。

ディスコグラフィ

  • Five Leaves Left(1969年7月3日)
  • Bryter Layter(1971年3月5日)
  • Pink Moon(1972年2月25日)
  • Fruit Tree(1979年)
  • Made to Love Magic(2004年5月24日)
  • Family Tree(2007年7月9日)

レガシーと評価

没後の1979年に発表された回顧盤『Fruit Tree』によってバックカタログは再評価され、1999年のフォルクスワーゲン・カブリオレCM起用が契機となり『Pink Moon』の売上が急増。以降、彼の楽曲は『The Royal Tenenbaums』『Serendipity』『Garden State』などの映画サウンドトラックにも採用され、新たなリスナー層を獲得しました。ノラ・ジョーンズやホセ・ゴンザレス、アイアン・アンド・ワイン、フィービー・ブリジャーズらが影響を公言し、2024年にはBBCプロムス『An Orchestral Celebration』でオーケストラ演奏が行われるなど、現在もその音楽性と神秘性は色褪せることなく、多くのミュージシャンやリスナーを魅了し続けています。

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