VAVとは?仕組み・メリット・デメリットを徹底解説|空調制御の最新技術


VAVとは

VAV(Variable Air Volume:可変風量方式)とは、建築や設備設計において使われる空調制御システムの一種で、供給する空気量(風量)を自動的に調整することで、室内の温度を一定に保つ仕組みです。日本語では「可変風量方式」と呼ばれ、近年のオフィスビルや商業施設などで多く採用されています。

従来の空調方式であるCAV(Constant Air Volume:一定風量方式)が、常に同じ風量で空気を供給して温度を制御していたのに対し、VAVは室温に応じて風量を変化させるのが最大の特徴です。


VAVの仕組み

VAV方式では、空調機(AHU)から送られる空気が、各ゾーンに設置されたVAVユニット(VAVボックス)を通って供給されます。
このVAVユニットには風量制御ダンパー
温度センサーが備わっており、次のように制御が行われます。

  1. 室内温度をセンサーが常時計測する
  2. 設定温度との差を検出する
  3. 必要に応じてダンパーを開閉し、供給風量を増減させる

この制御によって、各部屋やゾーンごとに最適な風量が供給され、快適な室内環境が維持されます。


VAVのメリット

1. 省エネルギー効果が高い

必要な風量だけを供給するため、ファンの消費電力を削減できます。
また、再熱コイルや冷水コイルの負荷も減少し、空調全体のエネルギー効率が向上します。

2. 快適性の向上

ゾーンごとに独立した制御が可能なため、部屋ごとの温度ムラを解消できます。
特に窓際や内部ゾーンなど、日射や人の密度に応じてきめ細かく制御できる点が魅力です。

3. 設備容量の削減

全負荷での稼働が不要となるため、空調機やファンの設計容量を小さくできる場合があります。
初期投資の抑制にもつながります。


VAVのデメリット

1. 初期コストが高い

各ゾーンにVAVユニットを設置し、制御機器やセンサーを組み合わせるため、初期導入費用がCAV方式より高くなります

2. 制御が複雑

自動制御システム(BAS:Building Automation System)との連携が必要であり、設計・調整・メンテナンスに専門知識が求められます

3. 騒音・風量バランスの課題

風量を減らしたときに風切り音が発生することや、全体の風量バランスを取る調整が必要になる場合もあります。


VAVとCAVの比較表

項目VAV方式CAV方式
風量可変一定
エネルギー効率高い低い
初期コスト高い低い
快適性高い(ゾーン制御可)やや低い
制御の複雑さ複雑単純

VAV方式が適している建物

  • オフィスビル(執務エリアの快適制御)
  • 商業施設(ゾーンごとの利用変動に対応)
  • 病院・研究所(精密な温湿度管理が必要な場所)
  • 教育施設(時間帯や人数変動に合わせた省エネ運用)

まとめ

VAV方式は、快適性と省エネ性を両立できる空調システムとして、現代建築では標準的な選択肢となりつつあります。
初期コストや制御の複雑さといった課題はありますが、長期的なランニングコスト削減や環境配慮の観点から、今後ますます普及していくと考えられます。