サン=ジェルマンの詩人歌姫:コラ・ヴォケールの時代と響き

戦後フランス・シャンソンを代表する歌手、コラ・ヴォケール(本名:ジヌヴィエーヴ・マルグリット・コラン)は、1918年7月22日にマルセイユで生まれ、詩人ジャック・プレヴェールやアルチュール・ランボー、ギヨーム・アポリネールらの詩をシャンソンに昇華する独自の表現力で知られました。代表曲「枯葉(Les Feuilles mortes)」や映画『French Cancan』主題歌「モンマルトルの丘(La Complainte de la Butte)」をはじめとするレパートリーで、詩の深みと音楽性を見事に融合させ、その優雅かつ力強い歌声は“サン=ジェルマン=デ=プレの白い貴婦人”と称されました。1980年と1983年には初来日を果たし、Sogetsu Hallなどでリサイタルを開催、日本でも熱狂的なファンを獲得しました。2011年9月17日、パリで93歳の生涯を閉じた彼女の功績は、再発盤やコンピレーションのリリースを通じて今日も語り継がれています。。
生い立ちと音楽的背景
1918年7月22日、プロヴァンスの港町マルセイユに本名ジヌヴィエーヴ・マルグリット・コランとして生まれました。幼い頃から詩への造詣が深く、南仏の豊かな文化環境に育まれたと言われています。
戦時下の1941年には、当初ミシェル・ダックス(Michèle Dax)の芸名で歌手デビューを果たし、その豊かな声質が早くも注目を集めました。同時期に詩人かつ作詞家のミシェル・ヴォケールと結婚し、彼の支えのもと芸名を「コラ・ヴォケール」に定め、本格的にシャンソンの道を歩み始めます。
キャリアの転機と代表曲の誕生
1940年代後半、詩人ジャック・プレヴェールと作曲家ジョゼフ・コスマの作品「Les Feuilles mortes(枯葉)」を最初に舞台で歌唱し、戦後シャンソンの象徴的ナンバーとして大ヒットさせました。1955年にはジャン・ルノワール監督の映画『French Cancan』で「La Complainte de la Butte(モンマルトルの丘)」を創唱し、その詩的情景描写と共に広く知られる代表曲となります。さらに、マルグリット・デュラス脚本の映画『Une aussi longue absence』(1961年)における「Trois Petites Notes De Musique(三つの小さな音符)」の挿入歌が評判を呼び、音楽史に名を刻みました。
代表曲と詩的表現の深み
- Les Feuilles mortes(枯葉):哀愁を帯びたメロディと諦観を感じさせる歌詞で、戦後の喪失感を象徴する一曲です。
- La Complainte de la Butte(モンマルトルの丘):映画『French Cancan』の劇中歌として制作され、流麗な語り口でモンマルトルの情景を描き出します。
- Les temps de cerises(さくらんぼの実る頃):19世紀の民謡をシャンソンに再構築し、普遍的な郷愁を呼び起こします。
- Trois Petites Notes De Musique(三つの小さな音符):淡い郷愁と希望を交錯させる歌詞が印象的です。
また、ギヨーム・アポリネールの詩にレオ・フェレが曲を付けた「Le Pont Mirabeau」や、ルイ・アラゴンの詩にリーノ・レオナルディが曲を付けた「Maintenant que la jeunesse」など、詩人と作曲家の多彩な組み合わせを積極的に取り上げ、シャンソンの詩的可能性を広げました。
ディスコグラフィー詳解
スタジオ・アルバム
- 1956年:Les Jardins de Paris (Pathé)
- 1956年:Chansons pour ma mélancolie (Pathé)
- 1964年:Complainte du Roy Renaud (Pathé)
- 1972年:Plaisir d’amour (Le Chant du monde)
- 1976年:Heureusement on ne s’aimait pas (Festival)
ライブ・アルバム&コンピレーション
- 1975年:Cora Vaucaire au Théâtre de la Ville (Productions Jacques Canetti)
- 1997年:Cora Vaucaire 97 (Comédie des Champs-Élysées)
- 1999年:Cora Vaucaire aux Bouffes-du-Nord (Théâtre des Bouffes-du-Nord)
- 1999年:Cora Vaucaire(EMI Music/Pathé 4CD)
- 2005年:La Dame blanche de Saint-Germain-des-Prés (EPM Musique)
来日公演と日本での評価
1980年11月、東京・Sogetsu Hallで初リサイタルを開催し、詩情豊かな歌唱で日本のシャンソン・ファンを魅了しました。続いて1983年にも来日公演を行い、いずれの公演もソールドアウトとなるほどの人気を博しました。日本の評論家からは「言葉の一つひとつを大切に紡ぐ歌手」と評され、その細やかな表現力が高く評価されました。
功績とレガシー
シャンソンに詩的な深みと文学性をもたらした功績は多大で、同時代のバルバラやレオ・フェレといった作家を世に広く紹介した役割も果たしました。現在も各レーベルから再発盤やコンピレーションがリリースされ、ディスコグラフィーは高い評価を受けています。
終章:深い詩情を歌い継ぐ声
2011年9月17日、パリで93歳の生涯を閉じ、ペール=ラシェーズ墓地に遺灰が納められました。その歌声は今もシャンソンの歴史を彩り続け、聴く者の心に詩の世界を鮮やかに描き出しています。
参考文献
コラ・ヴォケール - Wikipediaウィキペディア
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