フリオ・ソーサとフランシスコ・ロトゥンドが紡ぐ青春の響き

ウルグアイ出身のバリトン歌手Julio Sosa(フリオ・ソーサ)が1953年から1955年にかけてFrancisco Rotundo y Su Orquesta Típicaと共演し録音した代表曲『Yo soy aquel muchacho』について、その誕生秘話から音楽的実践、リリースと再発の歩み、さらには今日のコレクターズアイテムとしての価値までを多角的に掘り下げます。
アーティスト背景
Julio Sosa(本名:Julio María Sosa)は1950年代のリオ・デ・ラ・プラタで「エル・バロン・デル・タンゴ」と称された屈指のタンゴ歌手です。彼は1949年にアルゼンチンへ渡り、Francini–Pontier楽団などでキャリアを積んだ後、1953年にFrancisco Rotundoのオルケスタ・ティピカに迎えられました。Rotundo率いる小編成のオルケスタは、歌手を際立たせる緻密なアレンジで知られており、Sosaとの共演はタンゴ愛好家から高い評価を獲得しました。
Francisco Rotundo(1919–1997)はブエノスアイレス出身のピアニスト、作曲家、オルケスタ指揮者で、特に歌手を引き立てる洗練された編曲とコンパクトな楽団運営を得意としていました。1945年に自身の楽団を結成後、1952年にはEnrique Camposを起用して大きな成功を収め、その後1953年から2年間にわたりJulio Sosaを月給5000ペソで迎え入れ、多くの名録音を生み出しました。
レコード制作の経緯
『Yo soy aquel muchacho』は、作曲をMáximo Orsi、作詞をVicente Russo&Joaquín Moraが手掛けた1934年発表のタンゴを、SosaとRotundoが新たにレコーディングしたものです。録音は1955年6月9日にアルゼンチンのPampaレーベル(カタログ番号ERT-6981)より7インチ・シングルでリリースされ、A面に本曲、B面に『Bien bohemio』を収録。当時のプレスは重量のあるビニールを使用し、Rotundoのバンドネオンと弦楽器が織りなす上品なサウンドが特徴的でした。
音楽的特徴と歌詞分析
演奏はバンドネオンを中心に弦楽器とピアノが絡み合う典型的なオルケスタ・ティピカ編成で、歌唱を支えるコンパクトな編成がドラマティックなムードを生み出しています。Sosaの深いバリトンは「春の訪れと別れの悲哀」を歌詞で表現し、聴き手の感情に直接訴えかける力を持ちます。特に間奏でのRotundoのピアノソロはしっとりと曲を包み込み、歌へと自然につなげる演出が光ります。
リリース情報とバリエーション
オリジナルの7インチは南米各地で流通し、ウルグアイ盤(Odeon URL-21.507)やチリ盤など複数バリエーションが存在します。1973年にはアルゼンチンEMI/OdeonよりLPコンピレーション(Colección Musical, Catalog 4176)として再発され、ステレオ録音による立体感あるサウンドで再評価を受けました。その後カセットテープやCDにも収録され、2002年のCD『Sus Éxitos Con Julio Sosa Y Enrique Campos』にも代表作として選定されています。
再発・リマスターと現代的評価
2016年10月21日にはリマスター版アルバム『Yo soy aquel muchacho (Remastered)』として配信・CD化され、最新のデジタルフォーマットで聴けるようになりました。SpotifyやYouTubeでも高音質版が提供され、世界中のタンゴファンから再注目を集めています。音質向上によりRotundoのバンドネオンの息遣いやSosaのビブラートがよりクリアに再現され、当時の録音技術を超えた臨場感が楽しめます。
コレクターズアイテムとしての価値
オリジナル7インチの南米ビニール盤は流通数が限られ、特に良好なコンディションのウルグアイ盤は20~50米ドルで取引される希少アイテムとなっています。LPやCDの初回プレスもプレミア価格が付きやすく、専門店やオークションサイトでの需要が高まっています。タイムカプセル的な魅力を求めるコレクターには欠かせない一枚です。
影響とカバー
本曲は録音後も多くのアーティストにカバーされ、1966年にはCherry NavarroやSimone de Oliveiraが、1994年にはChayanneがそれぞれアルバムに収録しました。各アーティストによる解釈はテンポやアレンジが異なり、多彩なヴァージョンが存在することで楽曲の普遍的な魅力が証明されています。
結論
『Yo soy aquel muchacho』はJulio SosaとFrancisco Rotundoによる1955年録音から現代のリマスター版まで、多層的な魅力を放つタンゴの名盤です。バリトンの名歌手と編曲の名手が紡ぎ出す世界観は、時を超えて多くのリスナーを魅了し続けています。ぜひオリジナル盤やリマスター版を手に取り、その情感豊かな歌声と演奏を堪能してください。
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