モーダル・ジャズの金字塔――マイルス・デイヴィス6大名曲

本稿では、20世紀のジャズを根底から変革したマイルス・デイヴィスが1958~59年に発表した代表的6曲を取り上げ、それぞれの作曲背景、演奏の特色、音楽的意義を詳述します。これらの楽曲は、モーダル・ジャズの開拓からオーケストラル・アレンジまで、マイルスの多彩な革新性を象徴しており、ジャズ史に不朽の足跡を残しています。

「So What」

「So What」は1959年8月17日リリースのアルバム『Kind of Blue』冒頭トラックで、モーダル・ジャズの代表作です。ベースの「呼びかけ→応答」から始まるイントロのあと、Dドリアン・モードとE♭ドリアン・モードが交互に展開するシンプルながら奥深い構成が特徴。マイルスのトランペットとジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイらが対話的に即興を繰り広げ、モード・ジャズの新境地を切り拓きました。

「Freddie Freeloader」

同じく『Kind of Blue』の2曲目に収められた12小節ブルースです。通常のB♭7→F7ではなく、終結部の2小節だけA♭7を用いるユニークなコード進行が魅力。ビル・エヴァンスではなくウィントン・ケリーがピアノを担当し、そのスイング感あふれるソロが全体に軽やかな躍動をもたらしています。マイルス、コルトレーン、アダレイらによる豪華なソロ交換も必聴です。

「Blue in Green」

『Kind of Blue』の3曲目に収録されたバラードで、ビル・エヴァンスとの共作とも伝えられています。4小節のイントロに続く10小節サイクルという独特の形式と、叙情的なハーモニーが静謐な世界を生み出します。エヴァンス自身も「自分の曲」と語った深いムードが、各ソロの時間的伸縮と相まって心に染み入ります。

「All Blues」

6/8拍子の12小節ブルース形式を採用。わずかなモーダル・チェンジとマイルスの自由な旋律構築によって、シンプルながら色彩豊かなムードを演出します。ポール・チェンバースのイントロ・ベースから始まるリズム・セクションの緩急ある推進力が、テーマと変奏の連続を支えています。

「Milestones」

1958年9月リリースの同名アルバム収録曲で、マイルス初のモーダル・コンポジションとされます。Gドリアン→Aエオリアン→再びGドリアンというシンプルながら革新的な構造を持ち、キャノンボール・アダレイやジョン・コルトレーンら“初代クインテット”の演奏が新たな音楽性を提示。『So What』へと続くモーダル・ジャズの扉を開きました。

「Summertime」

ジョージ・ガーシュウィン作のスタンダードを、マイルス&ギル・エヴァンスがオーケストラルに再構築した名演。ギル・エヴァンスの編曲ではコードではなくスケール指定のみで演奏し、空間と自由度を強調。1958年8月の録音セッションで生まれた、サード・ストリーム/オーケストラル・ジャズの頂点です。

以上の6曲は、マイルス・デイヴィスがモーダル・ジャズを切り拓き、オーケストラル・アレンジへと挑戦した軌跡を示す代表作です。時代を超えて愛され続けるこれらの名演は、ジャズの真髄を味わうための必聴盤と言えるでしょう。


参考文献

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